著者: 劉迎春 弁理士
中国専利法の関連規定に基づいて、専利(注:特実意を含め)の権利付与が公告された日から、いかなる機関又は個人が、当該専利権の付与が関連規定に適合しないと考える場合、国家知識産権局専利局復審と無効審理部(元復審委員会)に当該専利権の無効を宣告するよう請求することができる。
近年、専利無効審判プロセスは、復審及び無効審判受理部が無効審判請求を受理してから審決を下すまでの期間が短縮されつつあるが、多くの専利無効審判事件が民事訴訟に絡むため、当事者双方が無効審判プロセスの期間のさらなる短縮を希望している。サービスの品質をさらに向上するために、2017年6月27日に、国家知識産権局は「専利優先審査管理弁法」を公布し、該「弁法」が2017年8月1日より施行され、その中に、発明、実用新案及び意匠の無効審判に対する優先審査が加えられた。
現在、「専利優先審査管理弁法」が施行されてからすでに2年が経ち、ここで主な問題について簡単に紹介する。
一、優先審査の対象となる専利無効審判事件の条件
まず、優先審査を請求しようとする専利無効審判事件について、下記の条件を満たさなければ、普通のプロセスを利用するしかできない。これらの条件は主にいくつかの種類に分けられる:
(1)事件に関する条件:(A)無効審判事件に関わる専利権の侵害紛争が生じ、当事者がすでに、地方知識産権局による処理の請求、裁判所への提訴又は仲裁・調停組織による仲裁・調停の請求を行っている場合。又は(B)無効審判事件に関わる専利が、国の利益又は公共の利益に重大な意義をもつ場合。
(2)請求人に関する条件:(A)無効審判請求人及び専利権者を含む当事者がいずれも無効審判事件の優先審査を請求できるが、一方の当事者が複数の主体である場合、当方の当事者全員の同意を経なければならない;(B)無効審判事件に関わる専利権侵害紛争を処理、審理する地方知識産権局、裁判所又は仲裁・調停組織は、無効審判事件について優先審査請求を提出することができる。
(3)手続き的条件;(A)当事者が優先審査請求を提出する場合、優先審査請求書原本及びかかる専利権侵害係争の立案通知書、答弁通知書、訴状、応訴通知書などの書類のスキャンデータを提出しなければならない。優先審査請求書には、該当事者(主体が複数である場合、全員でなければならない)にサイン又は捺印されたうえ、国務院の関係部門又は省級知識産権局が推薦意見を記入しなければならない、(B)地方知識産権局、裁判所、仲裁・調停組織が無効審判事件の優先審査請求を提出する場合、優先審査請求書を提出するとともに理由を説明しなければならない。
注意すべきなのは、優先審査請求を提出する場合、国務院の関係部門又は省級知識産権局が推薦意見を記入する必要がある。行政手続きを増えたとともに、ハードルも高め、かかる専利権侵害係争の立案通知書、答弁通知書、訴状、応訴通知書など書類のスキャンデータの他、さらに委任状、省級知識産権局に無効審判事件優先審査を推薦するための情況説明文などを作成しなければならない。知識産権局によって要求が異なる可能性があるのは言うまでもない。筆者は該管理弁法が施行された後すぐに一連の専利無効審判事件について優先審査請求を提出した。最初に提出した優先審査請求は、省級知識産権局で曲折を経た。具体的に、最初に提出した請求書フォーム(電子)には連絡先及び添付書類などの情報が記載されたことによって、優先審査請求人の捺印及び国務院の関係部門又は省級知識産権局の推薦意見欄が2頁目になってしまい、該省級知識産権局はサイン欄が2頁目に置くと、1頁目の内容が改ざんされる恐れがあるという理由で拒否した。結局、我々は再度フォームを一頁にまとめた上で、許可をもらった。実は、省級知識産権局の懸念について、フォームの2頁目に推薦意見が記入、捺印されるうえで、1頁目と2頁目に割り印を押すことによってその問題を解決できると考えるが、簡単に拒否されてしまうという処理方法により、再度当事者全員のサイン又は捺印を貰わなければならず、数日もかかった。
二、優先審査を請求するタイミングについて
無効審判優先審査請求を提出するタイミングに注意しなければならない。タイミングが間違うと、無効審判プロセスの期間を短縮することに役立たず、更に労力を無駄にする。たとえ国家知識産権局専利局が優先審査を許可したにもかかわらず、提出されたタイミングが間違ったため、その後普通プロセスに戻されることもある。
当事者にとって、できる限り優先審査請求を早期に提出することは、時間を可能な限り短縮できることを意味している。合議体は既に結成され且つ口頭審理通知書が発行されてから、優先審査請求を提出したら、基本的に時間短縮の効果がない。その理由について、この時、口頭審理の時間及び口頭審理廷がすでに決められ、口頭審理の時間を変更すると、合議体が、口頭審理廷の変更について連絡し、当事者双方に通知書を出す必要等があるため、当事者双方が変更通知を受領する時、すでに元の口頭審理時間に近づいている。結局、加速されるプロセスは口頭審理後早めに結果が出され、プロセス全体の時間はそんなに減らすことができない。
無効審判請求人にとって、無効審判請求を提出してから1ヶ月間以内に証拠及び理由を補充することができる。証拠や理由を追加したい場合、優先審査請求を提出しないほうがいい。しないと優先審査請求を提出し許可された後証拠や理由を追加すると、国家知識産権局は優先審査を停止し、普通のプロセスに戻すことができる。積極的に補充証拠や理由とともに、優先審査請求書及び関連書類を準備し、補充証拠や理由を提出すると同時に、又はその後まもなく無効審判プロセスの優先審査請求を提出することが考えられる。
権利者側が優先審査請求を提出する場合、まず請求の範囲の修正方式を考えなければならない。優先審査請求が一旦許可されたら、削除以外の方式で請求の範囲を修正する場合、国家知識産権局は優先審査を停止し、普通のプロセスに戻すことができる。2017年4月1日より「『専利審査指南』の改正に関する国家知識産権局の決定(2017)(第74号)」が施行されてから、請求の範囲に対する修正への制限が緩和され、複数種類の方式で専利請求の範囲を修正できるようになった。そのため、最初に方各面のメリット・デメリットを比較して、専利書類への修正及び優先審査請求を提出する最適のタイミングを見つけなければならない。
三、無効審判優先審査プロセスの許可について
無効審判優先審査請求を許可するかは、具体的な事件を審理する合議体ではなく、立案及びプロセス管理処が判断する。優先審査書類が揃い、不備がない場合、約半月後に優先審査請求を提出する当事者は許可されるか否かの通知書を受領する。
注意されたいのは、必要なすべての書類を揃え且つ優先審査請求を提出すれば、必ずしも許可を下すとは限らない。周知のように、専利保護意識の強化とともに、毎年専利侵害事件の数も増えつつあり、国家知識産権局が受理する無効審判事件も大幅に増えている。大量の普通プロセスの審理に影響しないことを前提として、国家知識産権局は、技術分野毎の審査能力などの情況に応じて、優先審査を許可することを確定した上、無効審判プロセス優先審査を適用する通知書を発行する。そのため、許可されるか否かが国家知識産権局当時の受領事件数にも影響される。
また、事件が非常に複雑である場合、国家知識産権局が優先審査を許可する可能性も高くない。たとえ許可されたとしても、後続審理中に、難しい事件と認定し、優先審査プロセスを停止し、普通プロセスに戻す可能性がある。筆者担当の無効審判プロセス優先審査が許可された1件目の事件でこのような経験があり、係争専利にかかる民事訴訟の金額が非常に大きかったため、合議体は難しい事件と認定し、「無効審判優先審査プロセス停止通知書」を発行して優先審査プロセスを停止し、普通プロセスに戻した。しかし、このような無効審判事件について、加速プロセスを積極的に試してみることも考えられる。
四、優先審査が適用された無効審判事件の審理期間について
無効審判プロセスの優先審査請求を提出する目的は審理期間を加速させることである。管理弁法の規定に基づいて、国家知識産権局は、優先審査が適用される通知書を発行する場合、通知書の発行日から、発明及び実用新案の無効審判は5 か月以内に審決し、意匠の無効審判は 4 か月以内に審決する。筆者が代理した、優先審査プロセスで審査した専利無効審判は確かに審理期間が大幅に短縮された。