執筆者:馬立栄 郭煜 王娟娟
2020年5月28日に、中華人民共和国民法典が第十三回全人代で採決され、2021年1月1日から施行される。これは中国の初めての民法典であり、画期的な出来事である。民法典第1185条によると、第三者の知的財産を故意に侵害し、情状が深刻な場合、被侵害者は対応する懲罰的賠償を請求する権利を有する。
悪意による知的財産侵害行為への懲罰的損害賠償は、中国の近年来の知的財産権の立法及び司法プラクティスにおける焦点になりつつある。2013年の商標法第三回改正において、懲罰的損害賠償(1~3倍)を初めて導入し、その後の2019年改訂において、懲罰的損害賠償を1~5倍まで引き上げた。
2015年に改正された「中華人民共和国種子法」(2016年1月1日より施行)にも、「…植物新品種権に侵害し、情状が深刻な場合、以上の方法で確定した金額の一倍以上三倍以下で損害賠償を確定可能である」という懲罰的損害賠償が規定された。
2019年に改正された「中国人民共和国不正競争防止法」(2019年4月23日より施行)には、商業秘密侵害の懲罰的損害賠償制度が導入された(一倍以上五倍以下)。改正中の専利法改正草案及び著作権法改正草案にもいずれも懲罰的損害賠償(一倍以上五倍以下)が導入された。
民法典に知的財産権侵害の懲罰的損害賠償を導入することにより、商標、商業秘密、植物新品種、専利、著作権を除いたその他の地理的表示、集積回路レイアウト設計といった知的財産権の故意侵害の懲罰的損害賠償にも法律的根拠を提供するとともに、有効に悪意による侵害行為を抑止することが期待できる。
民法典における知的財産権侵害の懲罰的損害賠償の導入は知的財産保護の強化戦略において堅実な一歩を踏み出したと言えよう。なお、懲罰的損害賠償を適用するには、故意侵害及び情状深刻という二つの条件があり、司法保護においては補填的補償を基本原則とし、懲罰的補償を補助原則とすることに注意されたい。