作者:徐静、倪振華、宋新月、張暁霞[1] 金杜律师事务所
最高人民法院は、2020年6月15日に「最高人民法院による知的財産権の民事訴訟の証拠に関する若干の規定(意見募集稿)」(以下、「知的財産権の証拠に関する若干の規定」または「意見募集稿」という)を公表し、2020年7月31日を期限として公衆意見を求めた。意見募集稿の中国語全文は以下URLを参照:http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-236421.html。
近年、中国では民事訴訟プロセスの規範変更が頻繁に行われている。2012年の『中華人民共和国民事訴訟法』(以下、『民事訴訟法』という)の全面改正に続き、2015年には「最高人民法院による『中華人民共和国民事訴訟法』の適用に関する解釈」(以下、「民事訴訟法解釈」という)が公布され、その中で証拠に関する規定に多数の変更が加えられている。2019年12月25日、最高人民法院は「最高人民法院による民事訴訟の証拠に関する若干の規定」(以下、「民事証拠規則」という)を改正し、民事訴訟の証拠について全面的に規定した。今回、最高人民法院知的財産裁判廷が起草した「知的財産権の証拠に関する若干の規定」は、前述した既存の民事訴訟における証拠の規定をベースにした、知的財産権の民事訴訟における証拠問題に関する専門的な規定であり、この規定では、知的財産権の司法裁判における証拠に関する特別な規則が多く示されている。
体裁を見ると、「知的財産権の証拠に関する若干の規定」は、「民事証拠規則」と同じ章構成を踏襲しており、4章に分かれている。本稿では、この4章の内容をまとめて、これらに対し簡単な総括及び論評を行う。
当事者の立証
第一部の当事者の立証については、合わせて11条項あるが、中でも注目すべき主な条項は以下のとおりである。
1.方法特許の立証責任の軽減(第3条)
知的財産権訴訟では、方法特許の立証が困難であり、従来、権利者にとって大きな悩みであった。今回の意見募集稿では、生産される製品が同じであり、特許の方法で製品を製造する可能性が高く且つ立証のために合理的な努力をしたことを権利者が証明すれば、裁判所は、立証責任を被告侵害者に転換するよう決定することができる。
注意すべき点として、現在の第3条の記載によれば、上記の条件を満たしていても、必ずしも立証責任の転換が行われるとは限らず、被告侵害者がその方法を立証することになるか否かついて、裁判所が自由に裁量する権利を有することである。中国には証拠開示規則がないため、方法特許の立証が困難である点を解決する観点から考えると、裁判所の裁量に依存するのではなく、本条に列挙された条件を満たせば立証責任の転換が可能であることを、より明確にする必要がある。
2.侵害比較への自認の不適用(第6条)
「民事証拠規則」は、自認に対して詳細に規定している。ここで非常に重要な規定は、自認は単に事実に対して適用されるに過ぎず、法的分析には適用されないという点である。この原則に従い、今回の意見募集稿では、権利の主体、権利の状態及び特許の技術的特徴の比較には、自認を適用しないと明確にしている。すなわち、当事者の認識及び陳述を基準とするのではなく、裁判所は依然として事件の証拠に基づき審査・決定を行うことを明確にしている。
本条では、特許侵害事件の技術的特徴の比較においてのみ、自認ルールの排除が明確化されている。しかしながら、商標事件や技術秘密侵害事件においても同様に、比較問題が伴う。著者はこの場合も同様に、自認ルールが適用されるべきではなく、この点についても本条で明確にすべきであると考えている。
3.公証されていない証拠の認定 (第8条)
知的財産権訴訟における立証の通常の方法は、侵害製品を公証付きで購入し、公証を経た実物や領収書等の文書を侵害行為の証拠とすることであり、これは中国における知的財産権訴訟において、ほぼ標準的な対応になっているが、これによって、訴訟コストが引き上げられ、権利行使が困難になっていることは間違いない。本条は、この問題の解決を意図し、公証なしで得られた侵害製品及び領収書等に対して、一定の証拠としての効力を与え、訴訟の証拠とすることができるとしている。しかしながら、本条の現在の条文は、上記の公証なしの物品及び文書を訴訟の証拠として使用可能であると限定しているだけで、認定のルールについては明確にしていない。すなわち、実際的な意義は小さい。証拠が信用に足るものとして確実に採用されるためには、権利者は依然として、公証という方法を踏襲せざるを得ない。
4.域外における証拠の特別規定(第9~11条)
本意見募集稿において、域外における証拠に関する規定の主旨は非常に明確であり、一定の条件を満たせば、域外の証拠文書の公証認証手続きを極力減らし、証拠の法定の形式的要件を簡素化するとしている。その内容は以下のとおりである。
- 認証不要な証拠(第9条):当事者が信憑性を認めたもの、または証人の証言によって裏付けられた域外証拠は、認証する必要がない。
- 公証認証が不要な証拠(第10条):中国裁判所の発効した裁判文書及び仲裁文書、公的または公開ルートで入手可能な出版物、特許文献など、並びに、他の手段で信憑性が確認できるもの。
- 域外訴訟委任手続きの簡素化(第11条):委任された権限の範囲が明確化されていない場合、すべてのプロセスでの権限が委任されていると推定される。送達の便宜を図るため、次の段階で訴訟文書を受領する権限を委任されているものと推定される。一審で公証認証手続きを行った場合、それ以降のプロセスでの公証認証の要件が省略される。
上記の条項の規定は、全体として域外の当事者に非常に有利であり、当事者の域外での公証認証の煩雑なプロセスを大幅に簡素化し、訴訟費用を削減するものである。しかし我々には、第9条の認証不要の基準は、改正後の「民事証拠規則」よりも厳しいと思われる。「民事証拠規則」によれば、身元関係の証拠を除き、すべての文書系証拠は認証不要であるが、本規定は認定の要件を引き上げており、域外証拠の簡素化を妨げている。
証拠の調査収集と保全
第二部の証拠の調査収集と保全については、合わせて18条項あるが、中でも注目すべき主な条項は、以下のとおりである。
1.証拠保全の許可において考慮すべき要因(第12条)
これらの条項では、裁判所が証拠保全の許可において考慮すべき要因を規定している。ここで、第(1)項、第(2)項では、出願人が自ら証拠収集する際の客観的な困難さについて規定している。第(3)項では、証拠の事件審理に対する重要性について規定している。第(4)項では、保全措置の証拠保有者に対する影響について、法律上で初めて強調している。現在の実務では、裁判所は、証拠保全を許可するか否かについて、かなり自由な裁量権を有する。一方、本条では、裁判所が考慮すべき要因を列挙しているものの、裁判所が証拠保全を行うべき条件に関して明確に定義していない。「申立人が以下の要因が存在することを立証し証明した場合、裁判所は当事者の証拠保存の申立てを許可しなければならない」と文言を修正するよう提案したい。また、本規定では、申立人が侵害の可能性が高いと証明するのに十分な証拠を有することについては規定していない。したがって、現在の条項は申立人(多くは侵害事件における原告)にとって、より有利である。この場合、本条項は実務上、原告によって濫用される可能性がある。
2.保全を行う裁判所及び方法(第13条、14条)
これらの規定では、具体的に保全を行う裁判所及び保全態様を規定し、また、証拠保有者の通常業務への影響を最小限に抑えることを規定している。これらの規定はいずれも、現行の司法上の実務と同様である。
3.証拠保全裁定の送達方法及び保全プロセス妨害の結果(第15、16条)
これらの条項では、証拠保全裁定の送達方法、証拠保全に対する協力拒否または妨害の結果、及び証拠保全措置が取られた証拠に対し恣意的な分解、置き換えまたは変更を行った場合の結果について規定しており、これらは現行の司法上の実務と一致している。司法上の実務では、裁判所が証拠保全措置を講じる前に、証拠保有者が訴訟を起こされるかまたは証拠保全措置が講じられようとすることを知って、関連証拠を隠蔽または変更することがないように、裁判所は通常、証拠保全措置を講じると同時に訴訟文書及び証拠保全に関する裁定を送達する。
4.証拠保全現場における関連措置(第17~19条)
これらの条項は、証拠保全に参与し立ち会う人員、証拠保全の具体的手段等を含む、証拠保全現場における関連措置について規定している。人員については、保全される証拠が商業秘密に関わると証拠保有者が主張したとしても、申立人の代理弁護士、弁理士または技術専門家が立ち合うことを認めなければならない。但し、秘密保持契約に署名することが求められる。現行の実務上では、現場で証拠保全に参与可能な人員の身元について、双方の当事者が紛糾することが多く、ほとんどの場合、裁判所は、申立人の訴訟参加者の立ち合いを認めないという、より保守的な措置を講ずる傾向がある。こうした措置は実際には、申立人が現場で意見や提案を述べる機会を奪うことになり、最終的には保全の効率を下げてしまう。第19条の規定はこうした状況について改善できると考える。
5.保全に誤りがあった場合の救済措置、及び申立人による保全証拠の使用放棄(第20、21条)
これらの条項はそれぞれ、保全に誤りがあった場合に証拠保有者が受けるべき救済措置、及び申立人が保全証拠の使用を放棄した場合の裁判所の対応について規定しており、現行の法律及び実務と差異はない。
6.鑑定申立ての事項の範囲(第22、23条)
これらの規定は、鑑定を申立てできる事項の範囲を規定しており、そのうち、第23条(4)項は、「係争技術における欠陥の有無」を鑑定できると規定している。この欠陥は、係争特許そのものの欠陥である可能性が高いと我々は理解している。すなわち、明細書が十分に開示されているか、請求項の保護範囲が明確であるかといった欠陥である可能性が高く、これらの欠陥は特許無効の事由となるはずである。我々としては、既存の法体系では、鑑定機関がこれについて意見を述べるのは適切ではないと認識している。
7.鑑定機関(第24、25条)
これらの条項は、鑑定機関が他の検定機関に検定を委託したり、鑑定人や鑑定機関の統一的な登録管理がなされていない事業分野については、裁判所が相応のレベルの専門機関や個人に直接鑑定を委託したりできることを規定している。前述の規定は、現行の司法上の実務において頻繁に発生する2つの状況に解決策を与えている。一つは、一方の当事者が鑑定結果に不満である場合、鑑定機関から委託された検定機関が関連する資格を持っていないことを理由に、手続き上の瑕疵を申し立てることである。もう一つは、特定の技術分野で登録された鑑定機関及び鑑定人がいない場合、裁判所は検定を委託できないことである。この二つの条項が最終的に司法解釈に書き込まれることにしたがって、こうした状況に対応するための明確な法的根拠を提供することができると考える。
8.鑑定範囲の変更(第26条)
本条は、鑑定される特許の請求項を無効手続において補正したことで生じた鑑定範囲の変更など、鑑定の過程における鑑定範囲の変更に関するものである。本条の規定は、現行の司法実務と差異がない。
9.一方の鑑定報告の証明能力(第27条)
本条は、一方の当事者の鑑定報告の証明能力について規定している。司法上の実務において、原告は被疑侵害技術が侵害に当たると証明するために、被告は被疑侵害技術が侵害に当たらないと証明するために、どちらも自ら、関連する鑑定機関及び鑑定人に、関連事実の判断のための鑑定報告を提出するように委託する可能性がある。通常、裁判所によって、当事者が提出する一方の鑑定報告書に対する判断も違ってくる。一部の裁判所は、鑑定機関及び鑑定人が法廷で検証を受けるよう手配することで、一方の鑑定報告の証明能力を客観的に認定している。また、別の一部の裁判所は、相手側が反対意見を述べただけで、一方の鑑定報告を全面的に否定し、且つ裁判所が別に鑑定を手配するなど、一方のみの鑑定報告を、無視する傾向がある。我々としては、本規定が司法解釈に書き込まれることにしたがって、裁判所が前者の方法を採用することを望んでいる。すなわち、鑑定報告が一方の委託によるものだからという理由だけで、その証明能力を簡単に否定するのではなく、当該鑑定報告について十分検証する機会を双方の当事者に与え、最終的には全体的な見地から、一方の鑑定報告の証明力を判断すべきである。
10.その他の専門的課題 (第28条)
本条では、当事者が事件の他の専門的課題について、評価レポート、経済分析レポート、または市場調査レポートを提出するよう専門機関に委託することを、裁判所に申立てできると規定している。本規定によれば、裁判所は、損害賠償、商標の知名度、混同または誤認の可能性などの問題について、適格な機関に客観的評価を委託することができ、これにより、損害賠償の計算がより専門化され、科学的なものとなる可能性がある。
11.立証責任の割り当て (第29条)
本条は本質的に、立証責任を当事者間で合理的に割り当てるための規定である。損害賠償問題については、特許法の司法解釈及び商標法において、損害賠償の証拠について同様の規定が定められている。本条の規定では、損害賠償の証拠に限定されると明確にしていないことから、この立証責任の合理的な割り当て制度は、侵害認定問題にも適用できるはずである。特に、大型機器やコンピュータソフトウェアの侵害の疑いがある事件では、裁判所は状況に応じて、関連する立証責任を証拠保有者に負わせるべきと認定できる。しかし、第12条と同様、意見募集稿における「できる」という文言は、依然として裁判所にかなり自由な裁量権を与えている。法律の指導性及び予期性をより強めるよう立証責任転換のための具体的な条件を明確に規定するとともに、関連条件の下では転換「すべき」という文言にすることを提案する。
証拠の交換及び検証
第三部は証拠の交換及び検証についてであり、合わせて14条ある。このうち、注目すべき条項は主に以下のものである。
1.再審プロセスでの先行技術、先行設計、先使用の抗弁における証拠の採用 (第30条)
本条は、被告侵害者が一審、二審のプロセスにおいて、先行技術、先行設計、先使用の抗弁を主張せず、再審を申し立てる際に当該抗弁の関連証拠を提出した場合、人民裁判所は通常採用しないことを規定している。本条によれば、一審または二審で先行技術の抗弁を主張しないと、再審段階で当該抗弁を提起することはできず、関連する証拠も裁判所によって認められないことになる。しかし、前審のプロセスで先行技術の抗弁が主張され、再審時に、新たに発見された証拠に基づいて主張が継続される場合、裁判所は、この新たな証拠を考慮して、先行技術の抗弁が成り立つか否かを判断するだろうか?または、被告侵害者は、新たな証拠により特許無効審判を請求し、同時に再審プロセスの中止を申し立てることができるだろうか?
2.商業秘密に関わる証拠の交換と検証(第31~35条)
これら条項は、商業秘密に関わる証拠の交換と検証を規定している。当事者及び訴訟参加者による秘密証拠の複製を制限することは、二次漏洩を防止し権利者の商業秘密を保護するために必要な措置であり、現行の法律及び司法解釈の規定に適合し、司法上の実務に沿うものである。
商業秘密に関わる証拠の場合、『民事訴訟法』第68条では、国家秘密、商業秘密及び個人のプライバシーに関する証拠は秘密にされなければならず、法廷で提示する必要がある場合、公開裁判で提示することはできないと明確に規定している。「最高人民法院による、独占行為から生じる民事紛争事件の審理に適用される法律の若干の問題に関する規定」第11条はさらに、「証拠が国家秘密、商業秘密、個人のプライバシー又はその他法律によって秘密にすべき内容に関連する場合、人民裁判所は、職権または当事者の申立てにより、非公開裁判、複製の制限または禁止、代理弁護士のみに提示、秘密保持承諾書への署名の命令等の保護措置を講ずることができる、と規定している。「最高人民法院による、知的財産権裁判の機能の十分な発揮による社会主義文化の偉大な発展繁栄の推進、及び経済の自主協調発展の促進における若干の課題に関する意見」第25条においても、裁判所が二次漏洩を防ぐために、商業秘密の知り得る範囲及び伝播ルートを制限する措置を講じることができると明確に規定している。また、2019年8月に江蘇省高級人民法院が公布した「知的財産権に対する厳格な司法保護の実施、及び高品質な発展のための司法保障の提供に関する指針」第3条第13項にも「訴訟での商業秘密の不適切な漏洩を効果的に防止する。秘密保持命令の発令、当事者による秘密保持契約または承諾書の締結、コピー・写真撮影の禁止、当事者の商業秘密の段階的開示、第三者の専門家による秘密証拠の審査などの方法によって、訴訟において商業秘密が不適切に二次漏洩することを防止する。」と明確に規定されている。よって、一般的に、裁判所が実務において、秘密証拠に対し、その複製を制限または禁止する秘密保持措置を講じていることは明らかである。
原告の商業秘密の二次漏洩を防ぐとともに、被告による証拠の検証権を十分に保障し、双方の利益のバランスを図るべきである。意見募集稿第31条では、代理弁護士、弁理士、専門知識を有するその他の者は、秘密証拠の閲覧のみが可能で、それを抄録する権利は有しないと規定している。閲覧は可能だが抄録は不可となると、被告代理人のレビューの負担が増える可能性があり、被告による証拠の十分な検証を妨げてしまう。したがって、本条項に、代理弁護士、弁理士、専門知識を有するその他の者が秘密証拠を抄録する権利について加筆することを提案する。さらに第34条では、当事者がいずれも商業秘密に関する証拠の交換、検証を行わないと同意した場合、裁判所は当該証拠の交換または検証を手配しなくてよいことが規定されている。実務上では、双方の当事者が秘密証拠の交換及び検証を行わないと同意する可能性は低い。控えめに言って、たとえ双方が同意したとしても、交換・検証をしていない証拠が、信用に足るものとしてどのように採用されるのか、裁判所が当該証拠に基づき、一方の当事者に不利な認定を行った場合、当該当事者にはどのような救済ルートが可能なのか、これらについて意見募集稿では具体的に規定されていない。正式な草案で明確化されるべきである。
3.証人の出廷証言 (第36~37条)
これらの規定は証人の出廷証言に関し、以下のとおり規定している。すなわち、証言事項が、証明される事実と関連し且つ出廷の必要がある場合、裁判所は証人の出廷証言の申立てを許可しなければならない。証人が書面による証言などの方法で証言することを許可した場合、裁判所は、当事者が当該証人の証言に対し検証を行うよう手配しなければならない。裁判所は、関連する組織及び個人に、出廷証言の通知を行う。当該組織及び個人が正当な理由なく出廷証言を拒否した場合、当該証人の証言は事件の事実を認定する依拠とはなり得ない。上記の条文は、「民事証拠規則」の関連規定に対応するものである。「民事証拠規則」第68条は以下のとおり規定している。すなわち、人民裁判所は、証人に対し出廷し証言して、裁判官及び当事者からの質疑を受けるよう要求しなければならない。また、双方の当事者が、証人が他の方法で証言することに同意し且つ人民裁判所に許可された場合、証人は出廷せずに証言することができる。さらに、正当な理由なく出廷しない証人が書面等の方法で提供した証言は、事件の事実を認定する根拠とはなり得ない、と規定している。民事証拠規則ではまず、証人が出廷して証言すべきであることを明らかにし、さらに証人が出廷して証言しなくてよい条件、すなわち、証人が他の方法で証言することに双方の当事者が同意し且つ裁判所の許可が必要である、と具体的に規定している。意見募集稿では、証人が出廷して証言しないことが許可された場合、証人の書面による証言が検証を経て、事件の最終決定の依拠となる可能性があると規定している。
4.専門的補佐人に関する規定 (第38~42条)
本条項は、専門知識を有する者の出廷に関し、専門知識を有する者の身元資格、出廷手続、費用負担等の問題について規定している。専門知識を有する者とは通常、専門的補佐人と呼ばれ、当事者が招聘した技術的専門家であり、当事者を補佐し、法廷で技術的問題について専門的意見を述べる者であり、その意見は当該当事者による陳述とみなされる。前述の民事証拠規則の第84条では以下のとおり規定されている。すなわち、裁判官は、専門知識を有する者に対し質疑することができ、当事者も裁判所の許可を経て、専門知識を有する者に対して質疑することができる。また、当事者それぞれが申し立てた専門知識を有する者は、事件における関連する問題について対質することができるが、鑑定意見に対する検証または専門的な問題に関する意見表明以外の法廷審理業務に参加することはできない、と規定されている。通信、バイオ医薬等の分野の特許事件のように、技術的に複雑な事件では、専門的補佐人制度の適用がより一般的である。専門的補佐人は当事者の一方により招聘されるため、必然的にその専門的意見には一定程度の偏りが存在することになるものの、当該制度には柔軟性があり、技術調査官、鑑定人等と協力して裁判官をサポートし技術的事実を調査し明らかにすることができるため、司法上の実務では積極的な応用価値がある。
証拠の査定認定
第四部は証拠の査定認定に関し、合わせて7条項あるが、中でも注目すべき主な条項は以下のとおりである。
1.電子的証拠 (第44~46条)
電子的証拠については、「民事証拠規則」の関連規定と一致するものに加え、裁判所が「不特定多数の者に公共のメールボックスを介して送付された電子メール」の信憑性を確認できることが特に明確にされている。また、この規定では特に、証拠の取得手段が行政管理規定に違反しているという理由だけで裁判所が証拠を否定してはならないと規定している。この条項の規定により、政策上の規制を受けているためVPN等の方式を用いなければ中国本土では入手できない証拠、例えば、YouTube、Google等から得た証拠は、裁判所に受け入れられる可能性がある。これ以前は通常、香港や台湾で公証することによって、こうした証拠を取得していた。
2.公証証拠(第47条、48条)
本規定では公証された証拠について、公証申立ての主体が利害関係者ではない、或いは公証機関が管轄権を有しないといった理由だけで、裁判所が公証された証拠を否定すべきではないとさらに明記している。本規定ではさらに、特定の状況において、公証機関は、公証した証拠を説明または訂正すべきとしている。
3.鑑定意見(第49、50条)
本規定では鑑定意見に関して、鑑定意見の証明能力を確定するために、鑑定意見を提出する鑑定機関の資格、能力、採用する方法、説明の論理、提出された鑑定資料、鑑定専門家の身元等について、裁判所が総合的な判断を下すよう求めている。
民事訴訟法及び関係司法解釈適用との関係連(51条)
本規定では最後に、本規定と、「民事証拠規則」及び本規定に先立って公布された司法解釈との関係について確認している。本規定で明確に規定されていない状況については、「民事証拠規則」の関連規定を適用すべきである。また、先に公布された司法解釈と矛盾する場合には、本規定を適用する。
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[1]この論評は、徐静弁護士(第一部)、倪振華弁護士(第二部)、宋新月弁護士(第三部)、張暁霞(第四部、第五部)による共著である。