筆者:張暁霞 黄文杰 知的財産権 金杜法律事務所
中国では、特許出願及び実用新案出願が権利付与された後、無効審判手続き以外、権利者は、請求項を自発的に補正する機会がない。無効審判が請求された後、権利者は、無効審判請求書及び証拠を受領してから一ヶ月以内に、無効審判請求に対して請求項を補正する機会がある。ただし、請求項の補正方式は、厳しく制限されている。
「専利法」第33条には、専利(注:特実意が含まれる)出願中の補正の基本的な原則が規定されており、即ち、「出願書類に対する補正は、元の明細書及び請求の範囲に記載された範囲を超えてはならない」。「専利法実施細則」第69条には、無効審判請求審査中の請求項補正の基本的な原則が規定されており、即ち、「無効審判請求の審査において、特許又は実用新案専利の権利者は、その請求の範囲を補正することができるが、元の専利の保護範囲を拡大してはならない」。これらの原則的な規定は、部門規章とする現行有効な2010年版「専利審査指南」第四部分第三章4.6節にも体現されている。具体的に、以下の通りである。
(1)元請求項の主題名称を変更してはならない。
(2)権利付与された請求項と比べて、元専利の保護範囲を拡大してはならない。
(3)元明細書及び請求の範囲に記載された範囲を超えてはならない。
(4)一般的に、権利付与された請求の範囲に含まれていない構成要件を追加してはならない。
上記原則的な規定において、認められる請求項の具体的な補正方式は訂正されたことがある。2017年公布された国家知識産権局第74号令は、2010年版「専利審査指南」を訂正した(下記表参照)。「請求項の削除」、「技術案の削除」を保留した上で、「請求項の更なる限定」、「明らかな誤りの訂正」という2つの補正方式を新たに追加した。このような補正は、権利付与された後請求項をもっと柔軟に補正できるという権利者の呼び声に応じてなされたものであり、請求項の補正方式が厳格から柔軟になる傾向も見受ける。
「専利審査指南」 2010年2月1日から施行 |
「専利審査指南」 2017年4月1日から施行 |
第四部分第三章 4.6.2補正方式 前記の補正原則を満たすという前提で、請求の範囲を補正する具体的方式は、一般的に、請求項の削除、合併及び技術案の削除に限定される。 請求項の削除とは、請求の範囲から一項又は複数項の請求項(例えば、独立請求項又は従属請求項)を削除することをいう。 請求項の合併とは、互いに従属関係をもたないが授権公告公報において同一の独立請求項に従属する2つ又はそれ以上の請求項の合併をいう。この場合、合併された従属請求項の構成要件の組み合わせにより新たな請求項になる。当該新たな請求項は、合併された従属請求項の全ての構成要件を含まなければならない。独立請求項が補正されていない限り、その従属請求項に対する合併方式の補正が許されない。 技術案の削除とは、同一の請求項における並列する2つ以上の技術案から、1つ又は1つ以上の技術案を削除することをいう。 |
第四部分第三章 4.6.2補正方式 前記の補正原則を満たすという前提で、請求の範囲を補正する具体的方式は、一般的に、請求項の削除、技術案の削除、請求項の更なる限定、明らかな誤りの訂正に限定される。 請求項の削除とは、請求の範囲から一項又は複数項の請求項(例えば、独立請求項又は従属請求項)を削除することをいう。 技術案の削除とは、同一の請求項における並列する2つ以上の技術案から、1つ又は1つ以上の技術案を削除することをいう。 請求項の更なる限定とは、他の請求項に記載されている一つ又は複数の構成要件を請求項に加えて、保護範囲を減縮することをいう。 |
審査実務では、中国国家知識産権局は、認められる請求項の補正方式に対する要求が非常に厳しく、通常、上記4.6.2に規定される具体的な方式に限定される。上記補正方式を満たさない請求項の補正は、一般的に受け入れられないが、審査/司法実務では、上記補正方式を突破した個別事件があり、これらの事件のうち、補正が受け入れられたものもあるし、拒絶されたものもある。執筆者は、これらの事件を整理し、これらの事件から反映された問題を通じて、無効審判手続きにおいて「専利審査指南」の制限を突破した請求項のどんな補正方式が認められるかを纏め、無効審判手続きにおける請求項の補正及び専利無効行政紛争(注:審決取消訴訟)事件の策略にガイドを提供することを期待している。
二、「専利審査指南」の制限を突破しようとするケース
2.1 請求項の補正が受け入れられなかったケース
案例一、(2013)高行終字第1737号
判決時間:2016年12月13日
請求項の補正方式:(請求項1を例とする)
補正前 | 補正後 |
1. 移動通信システムでセル間ハンドオフを実行する方法であって、 少なくとも1つの候補目的基地局で、移動端末によってサービス無線基地局へ送信されたアップリンク信号から信号強度および到着方向パラメータを測定するステップと、 前記測定された信号強度および到着方向パラメータをネットワーク・コントローラへ報告するステップと、 前記ネットワーク・コントローラが、セル間のハンドオフを実行するかを決定し、前記測定された信号強度および到着方向パラメータに基づいて、前記測定されたパラメータを使用した前記少なくとも1つの候補目的基地局を含む少なくとも2つの候補目的基地局から目的基地局を選択するステップと、 前記選択された目的基地局に命令して、前記移動端末の前記ハンドオフを完了させるステップと、 を含む、方法。 |
1. 移動通信システムでセル間ハンドオフを実行する方法であって、 少なくとも2つの候補目的基地局で、移動端末によってサービス無線基地局へ送信されたアップリンク信号から信号強度および到着方向パラメータを測定するステップと、 前記測定された信号強度および到着方向パラメータをネットワーク・コントローラへ報告するステップと、 前記ネットワーク・コントローラが、セル間のハンドオフを実行するかを決定し、前記測定された信号強度および到着方向パラメータに基づいて、前記測定されたパラメータを使用した前記少なくとも1つの候補目的基地局を含む少なくとも2つの候補目的基地局から目的基地局を選択するステップと、 前記選択された目的基地局に命令して、前記移動端末の前記ハンドオフを完了させるステップと、 を含む、方法。 |
判決の要旨:
請求項の補正により、技術案の内容を実質的に変更してはならない
請求項の保護範囲は、請求項に記載されている全ての内容を全体として限定されるものであり、そのため、権利者の請求項への補正が専利法実施細則の上記要求を満たすかを判断する際、技術案の全体から把握すべきである。請求項への補正が合法であるかの審査は、その保護範囲の大きさだけではなく、専利法の立法目的から、その保護を求める技術案の実質的な内容が変更されるかどうかを判断する。補正後の技術案の保護範囲が減縮されても、技術案の内容が実質的に変更されると、このような補正後の技術案を元請求項と異なる新たな技術案と見なし、それに対応して、無効審判請求審査手続きにおいて権利者のこのような補正を受けてはいけない。
第二審の裁判所は、以下のように認定した。文字的記載からみると、このような補正方式は、ただ技術案における候補目的基地局の数を減縮し、元専利の保護範囲を拡大しないだけではなく、却って縮小したように見えるが、請求項1、4、5が限定した技術案は、理論上、1つの候補目的基地局のみでその発明目的を実現できるという技術案を含み、少なくとも2つの候補目的基地局しか上記発明目的を実現できない技術案と明らかに異なり、両者は本質的に異なる。且つ、記述方式からみると、請求項1、4、5は選択肢が並列する請求項に該当せず、請求項の実質的な内容を影響しない程度削除可能な同価の技術案もない。したがって、権利者の請求項1、4、5への補正は、専利法実施細則の要求を満たしておらず、専利復審委員会が本専利の授権公告公報を審査の対象とすることは妥当である。
案例二、(2015)京知行初字第2006号
判決時間:2016年05月27日
請求項の補正方式:
補正前 | 補正後 |
1. 抗線維化薬ピルフェニドンの製造方法であって、出発原料として2-アミノ-5-メチルピリジン(構造式II)を使用し、1~30%の無機酸媒質中でジアゾ化し、加水分解して構造式IIIに示す5-メチル-2(1H)ピリドンを得て、得られた式(III)をヨウ化銅(I)または塩化銅(I)の触媒で式(IV)に示すハロゲン化されたベンゼン化合物と求核置換反応を行い、目的化合物であるピルフェニドン(I)を生成し、これを精製して純粋な生成物を得ることを特徴とする、製造方法。 2.前記無機酸が硫酸であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。 3.前記ハロゲン化されたベンゼンが、ヨードベンゼン、ブロモベンゼンまたはクロロベンゼンであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。 |
1. 抗線維化薬ピルフェニドンの製造方法であって、出発原料として2-アミノ-5-メチルピリジン(構造式II)を使用し、1~20%濃度の硫酸媒質中でジアゾ化し、加水分解して構造式IIIに示す5-メチル-2(1H)ピリドンを得て、得られた式(III)をヨウ化銅(I)または塩化銅(I)の触媒で式(IV)に示すハロゲン化されたベンゼン化合物と求核置換反応を行い、目的化合物であるピルフェニドン(I)を生成し、これを精製して純粋な生成物を得て、前記ハロゲン化ベンゼンが、ヨードベンゼン、ブロモベンゼンまたはクロロベンゼンであることを特徴とする、製造方法。 |
判決の要旨:
数値範囲に関する構成要件を含む請求項における数値範囲への補正は、補正後の数値範囲の2つの端点値が元明細書及び/又は請求の範囲に確実に記載され、且つ補正後の数値範囲が元の数値範囲内にあるという前提でなければ、許可されない。
本事件において、権利者は、係争専利の授権公告公報の請求項1を削除し、請求項2と3を合併するとともに、ジアゾ化ステップにおける硫酸の濃度を「1~30%」から、「1~20%」に補正した。しかし、係争専利の元明細書及び請求項において、ジアゾ化ステップにおける硫酸の濃度について、「硫酸の濃度は、1~30%であることが好ましく、更に好ましくは5%~10%である」、「5%の硫酸250ml」、「上記酸性媒質は、濃度が1~30%の無機酸媒質である」のみ記載されており、端点値が20%である硫酸の濃度が記載されておらず、且つ、係争専利の元明細書及び請求の範囲に記載の内容及び添付図面からも、ジアゾ化ステップにおける数値範囲が「1~20%」である硫酸の濃度を直接、且つ疑義なく確定できないため、権利者が補正した係争専利の請求項が中国専利法第33条の規定に満たしておらず、専利復審委員が権利者による補正後の係争専利請求項を受け入れないことは妥当である。
2.2 請求項の補正が受け入れられたケース
案例三、(2011)知行字第17号
判決時間:2011年10月08日
請求項の補正方式:
補正前 | 補正後 |
1、アムロジピンまたはその生理学的に許容され得る塩とイルベサルタンを有効成分として、1:10~30の重量比で配合した医薬組成物であることを特徴とする配合剤。 | 1、アムロジピンまたはその生理学的に許容され得る塩とイルベサルタンを有効成分として、1: 30の重量比で配合した医薬組成物であることを特徴とする配合剤。 |
判決の要旨:
補正方式の要求を満たさないという理由のみでこのような補正を許可しないことによって、本事件において、補正への制限は、単に権利者の請求項の不適切な作成への処罰になり、合理性に欠けている。且つ、「審査指南」によると、補正原則を満たすという前提で、補正方式は通常前述した三種類に限定されるが、他の補正方式を絶対に排除するわけがない。
本事件において、元請求項における1:10~30という技術案は典型的な並列技術案に該当しないが、1:30という具体的な値は、元明細書に明確に記載されており、且つ権利者が元明細書において明確に推薦する最適な重量比組成であることに鑑みて、当業者は、元明細書を読んだ後本専利が1:30の技術案を含むという結論を得ることになり、また、本専利の請求項にはこの変数のみを有し、このような補正は、例えばいくつかの変数がある場合補正により保護範囲が不明確になるなど他の不利な結果にならず、本専利の保護範囲がより明確になるため、許可するほうが公平である。
案例四、「分化および抗増殖活性を有するベンズアミド系のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤及びその薬用製剤」特許権無効審判請求案例
决定号:第24591号無効審判請求審査决定書
决定日:2014年12月10日
請求項の補正方式:
補正前 | 補正後 |
1、下記の一般式にて表される、分化および抗増殖活性を有するベンズアミド系のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤。 (I) (ここで、Aは、ハロゲン、C1~4のアルキル基またはトリフルオロメチルからなる群から選びられる1~4個の置換基を有してもよいベンゼン環又はピリジン環であり、 Bはベンゼン環であり、Zは共有結合であり、Yは-CO-NH-CH2-であり、R1およびR2はそれぞれ水素またはC1~4のアルキル基であり、R3は水素であり、R4はアミノ基であり、X1、X2、X3、X4のいずれかはハロゲンまたはC1~4のアルキル基であり、残りは水素である。) |
1、下記の構造式にて表される、分化および抗増殖活性を有するベンズアミド系のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤。
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决定の要旨:
権利者が請求項1に対して行った上記補正は並列する技術案の削除に該当しないが、補正後の具体的な化合物は、専利の明細書に明確に記載されており、且つ、本専利の発明の核心である。権利者による上記補正を許可すると、発明創造を奨励するという専利制度の立法本旨をもっと十分に体現し、専利権確認手続きにおいて専利の技術貢献を評価する際発明の本質を注目することに寄与でき、さらに、補正後の具体的な化合物は、専利の明細書において専利の核心内容として開示され且つその保護範囲にも含まれるため、上記補正を許可しても公示性の問題にならない。したがって、上記補正は、専利審査指南における補正方式への制限の初心に違反することなく、例外ケースとして認められるべきである。
案例五、(2017)京行終4464号
判決時間:2017年11月30日
請求項の補正方式:
補正前 | 補正後 |
1.パワーアンプ(1)と、ヘッド(6)と、ホーン部(3)とを備え、前記パワーアンプ(1)の出力端は、前記ホーン部(3)を装着したヘッド(6)に接続され、前記ホーン部(3)は、外端面の最大プロファイル寸法(2)が300mmと等しく又はそれより大きい、1500mmと等しく又はそれより小さいことを特徴とする、鉄道車両警音システム高指向性電気ホーン。 | 1.パワーアンプ(1)と、ヘッド(6)と、ホーン部(3)とを備え、前記パワーアンプ(1)の出力端は、前記ホーン部(3)を装着したヘッド(6)に接続され、前記ホーン部(3)は、外端面の最大プロファイル寸法(2)が300mmと等しく又はそれより大きい、1500mmより小さいことを特徴とする、鉄道車両警音システム高指向性電気ホーン。 |
判決の要旨:
専利法実施細則及び審査指南において無効審判手続きにおける請求項の補正を制限する原因は、その一つは、専利保護範囲の安定性を維持し、専利請求項の公示作用を保証することである。もう一つは、権利者が後で補正により出願日に発見されず、少なくとも明細書から体現できない技術案を専利の請求項に加えることによって後の発明が先の出願日を取ることを防止することである。
本事件において、端点値1500mmが削除されたが、当該端点値は、元請求の範囲及び明細書に明確な記載があり、且つ、補正後の数値範囲は依然として元請求の範囲及び明細書の数値範囲内にあり、元明細書及び請求の範囲に記載されている範囲を超えていないし、元の保護範囲を拡大してもいない。権利者の上記補正は、専利法及び専利法実施細則の関連規定に違反しておらず、専利審査指南における補正原则に関する規定にも満たす。さらに、権利者が端点値の削除を請求する補正は、専利審査指南第二部分第八章5.2.3.3に規定される許可されない補正の状況にも該当しない。よって、当該補正は、元明細書及び請求の範囲に記載されている範囲を超えていない。
案例六、(2016)京行終485号
判決時間:2016年3月11日
請求項の補正方式:
補正前 | 補正後 |
3. 前記ねじ体の先端はテーパー状を呈し、35°±5°に絞っていることを特徴とする請求項1に記載の板金薄板に用いられる快速ロック可能なタッピングねじ。 | 3. 前記ねじ体の先端はテーパー状を呈し、30°と等しい又はそれより大きく、且つ40°より小さく絞っていることを特徴とする請求項1に記載の板金薄板に用いられる快速ロック可能なタッピングねじ。 |
判決の要旨:
「専利法実施細則」及び「専利審査指南」において、無効審判手続きにおける権利者の請求の範囲への補正方式を制限することは、権利者が後で補正により公示された権利の保護範囲を拡大することを防止することを目的とする。
本事件において、本専利の有効な請求項及び明細書において、いずれも、「ねじ体の先端はテーパー状を呈し、35°±5°に絞っている」という構成要件が明確に記載されており、該絞っている角度は、「40°」という数値を含むべきである。権利者による補正後の本専利請求項3は、本専利の有効に維持された請求項及び明細書と比べて、「40°」という端点のみを除き、依然として元書類の数値範囲内にあり、元の保護範囲を拡大していないし、新たな技術案にもならない。したがって、権利者が本専利請求項3を「前記ねじ体の先端はテーパー状を呈し、30°と等しい又はそれより大きく、且つ40°より小さく絞っている」に補正したことは、技術案の削除に該当し、即ち、元請求の範囲に含まれる「ねじ体の先端はテーパー状を呈し、40°に絞っている」という技術案を削除した。元明細書及び請求の範囲に記載されている範囲を超えていないし、有効に維持された請求の範囲に含まれなかった構成要件を追加していないため、権利者の上記補正は、「専利法実施細則」及び「専利審査指南」の関連規定に違反していない。
案例七、(2019)最高法知行終19号
判決時間:2019年12月15日
請求項の補正方式:
補正前 | 補正後 |
1.ステンレス鋼製の製品をろう付けする方法であって、 (i)鉄系ろう材をステンレス鋼部品に配置することと、 (ii)部品を任意に組み立てることと、 (iii)(i)または(ii)からの部材を、非酸化性雰囲気、還元性雰囲気、真空、またはそれらの組み合わせの中で少なくとも1000℃まで加熱し、少なくとも1000℃の温度で少なくとも15分間加熱することと、 (iv)得られたろう付け領域の平均硬度が600HV1未満である製品を提供することと、 (v)ステップ(i)、ステップ(ii)およびステップ(iii)の1つ又は複数のステップを任意に繰り返すこととを含む方法。 2. 76μm以上の目地、穴、隙間、ひび割れ、亀裂を本法により封止または充填する請求項1に記載の方法。 20. 前記鉄系ろう材物質が、少なくとも40wt%のFe、14~21wt%のCr、5~21wt%のNi、6~15wt%のSi、および0.2~1.5wt%のBを含む請求項19に記載の方法。
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1. ステンレス鋼製の製品をろう付けする方法であって、 (i)少なくとも40wt%のFe、14~21wt%のCr、5~21wt%のNi、6~15wt%のSi、および0.2~1.5wt%のBを含む鉄系ろう材をステンレス鋼部品に配置することと、 (ii)部材を任意に組み立てることと、 (iii)(i)または(ii)からの部材を、非酸化性雰囲気、還元性雰囲気、真空、またはそれらの組み合わせの中で少なくとも1000℃まで加熱し、少なくとも1000℃の温度で少なくとも15分間加熱することと、 (iv)得られたろう付け領域の平均硬度が600HV1未満である製品を提供することと、 (v)ステップ(i)、ステップ(ii)およびステップ(iii)の1つ又は複数のステップを任意に繰り返すこととを含み、 76μm以上の目地、穴、隙間、ひび割れ、亀裂を本法により封止または充填する方法。
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特に説明したいのは、本事件が対象となる無効審判決定書の作成時間は、2016年8月3日であり、その時、「専利審査指南」における認められる補正方式は、「さらなる限定」を含まず、「請求項の削除及び合併」に限定される。本事件の行政訴訟中、「専利審査指南」が訂正され、2017年4月1日から請求項について「さらなる限定」の補正が可能になった。本事件の第二審判決の作成時間は2019年12月15日であり、第二審裁判所は、無効審判手続きにおいて権利者が行ったさらなる限定の補正方式を受けた。
判決の要旨:
専利無効審判手続きにおける請求項の具体的な補正方式への要求
無効審判手続きにおける請求の範囲の具体的な補正方式への制限は、補正が元の明細書及び請求の範囲に記載されている範囲を超えてはならないこと、及び元専利の保護範囲を拡大してはならないという2つの法的標準を実現する立法目的に注目し、行政審査行為の効率と権利者の貢献を公平に保護することとを両立すべきである。そのため、具体的な補正方式を厳しく制限してはいけない。さもなければ、補正方式への制限は、単に、請求項の不当作成への処罰になるに過ぎない。
請求項の補正が元専利の保護範囲を拡大するかの対比基準
専利無効審判手続きにおいて、請求項の補正が、従属請求項の付加構成要件の全て又は一部を従属先の独立請求項に追加することである場合、補正後の独立請求項が元専利の保護範囲を拡大したかを判断することは、当該付加構成要件が所属する元請求項の保護範囲ではなく、補正対象の元専利の独立請求項の保護範囲を基準とすべきである。
三.結び及び展望
2017年に訂正された「専利審査指南」に、「請求項のさらなる限定」の補正方式が新たに追加され、このような補正方式により、権利者が他の請求項に記載の一つ又は複数の構成要件を請求項に加えて、その保護範囲を縮小することができる。これで、権利者が請求項を補正する方式に更に柔軟性を付与するが、全体的に厳しく制限される。審査実務では、請求項の補正は、通常、「専利審査指南」に列挙された補正方式に限定される。
一方、上記案例に示すように、数値範囲に係るいくつかの案例において、(1)補正が元出願書類の範囲を超えない、(2)補正が元請求項の保護範囲を拡大しないという2つの前提条件を満たす場合、請求項の補正は、「専利審査指南」に認められる補正方式を突破し、判決者は、例えば、端点値を削除し、又は元請求の範囲に限定された範囲内で数値範囲を更に限定する方式(新たに限定された端点値は実施例に記載されたことがある)を受け入れた。特に、第24591号無効審判决定において、国家知識産権局が、行政手続きにおいて、マーカッシュ構造式を具体的な化合物に補正する補正方式も受け入れた。個別な事件であるが、この事件から、行政機関は、認められる請求項の補正方式を拡大し、権利者に多くの補正空間を与える有益な探索を見受ける。
また、上記案例七において、最高裁は2017年訂正版「専利審査指南」を援用して審査指南訂正前の行政行為に適用する。即ち、裁判所は、行政機関の部門規章の新旧規定の適用において、「旧法準ずる」という原則を適用せず、権利者に有利な角度から権利者に「有利」な原則を採用した。
上記案例は、行政手続き及び後続の司法審査手続きにおいて、特定の状況で国家知識産権局の部門規章の規定を突破できることを説明した。裁判所による「専利審査指南」への理解において、「審査指南」に挙げられた具体的な方式に完全に限定されなく、請求項補正の原則的な規定に注目する。これにより、権利者が無効審判手続きにおいて請求項を補正する他の可能性もあるようになる。個別な事件において、元専利の公示効力を損害せず、社会公衆が授権書類に基づいて生じる信頼利益を影響しない限り、発明者の利益への保護を有利にし、全社会のイーノベーションを促す角度から、請求項の補正方式への他の新たな突破を試すことができる。
以上